−札幌−
'95 11/19(日)藤女子大学
環境を考える漁村の女性たち

第1回シンポジウムは「環境」がテーマ。基調講演の小松錬平氏は、「このままいくと2050年には人類は 100億人を突破する。そのとき食料の供給をどうするのか。穀物の増産には限界がある。また畜肉類の 増産は森林伐採や土壌流出、科学汚染など地球環境の保全上問題が多い。しかし海の生物資源はバランスよく 利用すれば、生態系に影響を与えず持続的な食料供給が可能」と語り、海洋資源の計画的な利用の意義を 強調しました。続く柳沼武彦氏は「私は浜のお母さんたちとともに”百年かけて百年前の森に戻す”ことを目標に植林事業を行なってきた。この運動には、環境の保全と合わせて 漁業者自身の意識を変えるという大きな意義がある」として、漁業が生き残っていくための方向性を示しました。
パネルディスカッションは、各講師がそれぞれの立場から魚をめぐる環境、流通、食文化の問題について討議。 消費者のたちの立場から小路さん、和田さんは「環境保全と同時に魚食文化の継承も大切。”おいしい魚を食べた” という思いこそ原点では」と指摘しました。白石代表は「魚を通じて世界と日本が見えてくる。消費者も食資源について もっと賢くなる必要がある」とまとめ、次回につなげました。


木を植える、川を汚さない。 海を守るためにひとりひとりが 環境づくりを進めよう!
北海道漁婦連のお母さんたちは、海や川に魚が戻るように8年前から植林を始めています。 都会に暮らす私達にも、できることはあるすはずです。
魚食文化の未来は、家庭での食事から始まる。
ふだんの食生活を見なおすことが、漁業生産者とつながる第一歩です。


−長崎−
'95 11/26(日)長崎大学医学部記念講堂
日本人の伝統食-魚食文化の継承と普及

長崎では「魚食文化」がテーマ。基調講演の松尾栄偉子さんは「日本人の食生活が様変わりし、漁業 生産者が消費者からみえなくなっている。また輸入魚の急増で魚価が安定せず漁業を続けることは厳しい。 海の上の仕事はキツイ、汚い、危険だからと後継者も育たない。けれども日本の漁師ががんばってきたのは”日本人の食を まかなってきたのは漁業なんだ”という誇りがあるから」と熱い思いを語りました。
続くパネルディスカッションでは「消費者は魚が高いという。生産者は安いと嘆く。互いにどうしたら歩みよれるのだろうか」という近藤さんの発言に対し、 徳島課長は「輸入魚が魚価を下げている。しかし国内生産だけでは需要においつかない。節度ある輸入が必要。」 と理解を求めました。
また吉牟田さんは「若い世代の魚離れの原因は、?高い?調理・保存が難しい?教育、の3点にある。 家庭や学校で魚を食べさせる教育が不足していた」と述べ、西ノ首教授も「私たちも大学から外に出て研究の成果を漁業の現場に 役立てたいと思う。いい後継者は学校に入ってからできるわけではないのだから」と、漁業を身近にする方策を示しました。
パネルディスカッションは、各講師がそれぞれの立場から魚をめぐる環境、流通、食文化の問題について討議。 消費者のたちの立場から小路さん、和田さんは「環境保全と同時に魚食文化の継承も大切。”おいしい魚を食べた” という思いこそ原点では」と指摘しました。白石代表は「魚を通じて世界と日本が見えてくる。消費者も食資源について もっと賢くなる必要がある」とまとめ、次回につなげました。


−京都−
'95 12/2(土)〜3(日)京都 京都女子大学
世界人口の増加と食資源としての漁業

テーマは「食資源としての漁業」。
1日目、基調講演の小松錬平氏は「21世紀は魚をウマく食べた人の勝ち。日本は世界を大きく リードしているがこれからは海洋理念を作り上げていかなくてはならない」と、国レベルでの漁業基本法の必要性を訴えました。 また篠田正俊氏所長は「日本は古くから魚食文化を築き、漁師は地元の資源をなくさないような漁法を続けてきた。 どの国も自分たちの風土だけにあった胃袋を持っている。我われ日本人は、自分たちの持っているコメと魚という 絶妙の食文化を世界に広めていく努力が重要だ」と語りました。現地報告では、安倍澄子主任研究員が滋賀県特産のフナ寿司が フナの枯渇で存亡の危機に立っていることを報告し、琵琶湖に魚が戻るよう制定された「農業用水4ヶ条」や市民による環境美化活動を紹介しました。
パネルディスカッションでは、道下さんが「消費者はグルメに走るのではなく、漁獲量によって魚価が変わることも認識すべき。魚を食べ続けるために身近な生活排水にも気を つけていかなくては」と、消費者の姿勢について提言。丸木さんも「切り身でなく1匹まるごと買えば安くなる」と語り、”包丁教室”や地域の魚を翌朝届ける”かもめボックス”など、 消費者との具体的なつながりについて話しました。
ドミニカ国では環境を汚染した人を 地域で罰するシステムがある
21世紀の食資源は魚かも知れないのです。
乱獲さえしなければ、魚は枯渇しません。
国レベルでの漁業基本法が必要とされています。
海を汚し、環境を破棄しているのは誰なのかを、見極めましょう。
2日目はカリブ海から来日したディム・ユージニアさんが講演。「農業が主要産業だが国土の条件から漁業への期待が 大きい。男たちが水揚げした魚を女性が販売するなど、女性が重要な役割を果たしている」と話しました。またノルウェーのリリアン・セルビックさんは、スライドを上映しながら 「商業捕鯨が禁止されているが、魚は乱獲さえしなければ枯渇しない資源・本当の意味で海を破壊しているのは誰かを見極めなければならない」と訴えました。
午後は日本各地から参加したパネリストとゲストとのトーキングセッション。岡島課長は「ドミニカ国における資源の生かし方や、経済全体を考えながら安定的に供給しようとする考えには 感銘を受けた」。続く小路さんが「ゴミや汚水による海の汚染について対処しているか」と質問したところ、「ドミニカ国では環境を汚染した人を地域で罰するシステムができている」と回答。 日本も大いに学ぶべきだとの意見が相次ぎました。会場の女子学生からも「海外の旬の魚は?」「漁業は職業としてどのような位置づけか」「漁業に対して一挙に興味が湧いた」など多数の声が寄せられました。
最後に、各地域シンポジウムでだされた意見を整理してまとめた漁業と食文化に関する女性たちの提言」が提案され、拍手で採択されました。WFFはこの提言が「京都宣言」などに反映されるよう政府の 京都会議事務局に提出しました。
「漁業と食文化に関する女性達の提言」
要 旨
1.食文化に沿った料理や食事作法を将来の世代につなげる。
2.漁業の持続的な実施・消費者の健康的な生活を確保するため生産者と消費者のネットワークを推進する。
3.海洋環境悪化を防止するための努力を推奨する。
4.漁業の監督官庁に資源管理などの情報を一般生産者、消費者に伝えるよう要請する。
5.各国市民団体に人間の文化的な多様性や生物種消費の価値などを尊重するよう呼びかける。


−千葉−
'96 2/3(土) 千倉コミュニティーセンター
自然と共生した人間の食生活を考えよう

千倉町は、全5回の中で唯一、生産地域で開催。会場には山口功千倉町町長や県会議員が激励に訪れたのをはじめ 漁業、水産加工業、農業従事者や主婦など約250人の女性たちが集まりました。沼田眞氏は「人と自然の共生」 と題して講演。ネパールへのフィールドワークと絡めて環境問題の歴史を論じ、「環境問題の基本は人口問題と食料問題」「資源には 石油や石炭のように再生不可能なものと、海洋生物資源のように再生可能なものがある。この2つは使い分けて 考えなければならない」と述べ”資源の賢明な利用こそ真の共生”と説きました。
パネリストは地元の代表。羽山氏、石井さんは,第一次産業に賭けてきた人生をふりかえり「魚介類の資源保護と復活が重要」 「自分たちで販路を開拓していかなくては」と語りました。消費者の立場から古橋さんは「南房総にある”おいしい素材” をひとつ残らず表にだして伝えてほしい」と地元の食文化を重視。増田氏は栽培漁業の実施や魚食普及など、 行政としての取り組み状況を説明しました。赤田氏は千葉の海をめぐる30年の歴史を語り、生産者・消費者共に課題があることを指摘しました。
地域の資源は有効に利用すべき。
また地域の産物は、都会人には新鮮に思える。
”おいしい素材”をひとつ残らず伝えてほしい。
魚獲る人も食べる人も、”生活者”の視点は大切。
暮らしが都会化し、すべてが安易に流れている。
いま一度、食べ物の背景を考え、
生活者の目で見つめよう。
消費者は生産現場へ足を運ぼう。
とかく漁業は、都会からみえにくい。
海や浜など、生産の現場に近付くことが必要だ。


−宮城−
'96 2/24(土) 仙台JAビル
日本人の食資源について考えよう

基調講演の芳田誠一局長は「牛肉、鯨肉、豚肉、ジビエ(野鳥獣)と魚食文化」と題して講演。「農林水産業は 牛・豚を人工受精させ、野菜に花を咲かせないなど自然の在り方を変えながら発展してきた。罪の意識なしにはできない。 だからこそ、謙虚な姿勢で食べていくことが大切」「世界では反捕鯨の動きなどがあるが、食文化に優劣はない。 世界中が互いの文化に寛容であるべきだ」と語りました。
パネルディスカッションは、会場からの意見も出て活発に展開。吉田さんは「遠洋に出ているものは選挙に参加できない」など、漁業者に 対する政策に不備があることを指摘し、改善を訴えました。他のパネリストからは、「魚離れは、消費者が 調理の手間を嫌って安易に加工品を購入しているのが原因」「都市の人々は仕事に追われ食生活の大切さを忘れている」 「消費者がもっと海や浜など生産の現場に近付くことが必要」など、消費のあり方が問われる発言が相次ぎました。
最後に白石WFF代表が「連続シンポジウムはひとまず終了するが、生産者、消費者、また行政に対して多くの課題が指摘された。今後それらをどう具体化していくかが 重要」と述べ、4ヶ月間、のべ900人が参加した連続シンポジウムをしめくくりました。


−京都−
'95 12/4 京都国際会館
日本家庭のお魚料理レセプション

「日本の魚食文化を知ってもらおう!」WFFのお母さんたちが世界から集まった各国政府代表に日本各地の ”魚のお惣菜”をご馳走しました!

日本政府主催の国際会議にお母さんたちも参加!12月4日夜、全国から駆けつけたお母さんたちが、各国政府代表団に手づくりの家庭料理をふるまいました。 素材はもちろん魚。北海道、東北から九州まで地域色をふんだんに盛った「お惣菜」の数々。会場を埋め尽くした104カ国の代表たちは 日本料理の美しさに驚き、おいしさに舌鼓を打ってお刺身、鯛めし、さつま揚げ、いちご煮などを平らげました。
エプロン姿のお母さんたちがメニューを説明し、京都市内の女子大生がボランティアで通訳。アフリカ代表が「刺身がとてもおいしい」といえば、中南米代表は鯛めしに大満足とのこと。 紋別から駆けつけた能戸トクさんは、お正月には欠かせないというクジラ汁をつくりましたが、アメリカからの参加者が「とてもおいしい」といって食べる様子に、食欲は正直、と目を細めていました。
'95 12/4〜9 京都国際会館
「食料安全保障のための漁業の持続的貢献に関する国際会議」が開催。
「21世紀の食料をどうするのか」「漁業の役割は何か」。世界95カ国、国際機関、NGO、総計500名が参集し、 「京都宣言」及び「行動計画」が採択されました。
会議のテーマは「21世紀に向けて予想される食料不足に対し、人間にとって大切な食料をどう供給するのか」。95カ国、11国際機関、 9つのNGO、総計500人が世界中から京都に集い、6日間にわたる会議を通して食料不足への懸念と水産物供給増大の方策につき真摯な議論がくり広げられました。 そして「再生可能な漁業こそ、将来予想される食料危機を救う」(京都宣言)との認識を得て、具体的な行動計画が採択されました。
京都宣言の意識を理解し、行動計画をいかに具体化していくか-----。ここからの一歩こそ、漁業大国として会議の開催を呼びかけた日本、そして21世紀を共に つくっていく世界各国の人びととの責務といえるでしょう。WFFも、もちろんがんばります。

京都宣言の要旨
再生産可能な資源を利用する漁業は、食料安全保障に大きく貢献していることを認識し、資源保存管理措置や 資源の有効利用、健全な水産物貿易を地球規模で推進してゆき、全人類が食資源を持続的に享受できるよう努力する。